私たちは日常生活の中で電気を当然のように毎日使っています。テレビ・ラジオ・携帯電話・CDプレーヤー・コンピュータ・電車・自動車……、数え上げればきりがありません。何の不思議もなく使っている電気機器ですが、よくよく考えてみると不思議なことだらけです。なぜテレビで映像が見えるのだろう、どうして携帯電話は小さいのに会話ができるのだろう、CDで音楽が聴けるのはなぜ?など、改めて考えるとわからないことだらけだと思います。
電気は目に見えないものなので、なかなか理解しづらいものです。さらに電気を本格的に知ろうとすると、電気工学だけではなく数学など電気以外の分野の知識も必要になります。また、最近の電気機器はICの発達により非常にコンパクトになってきています。ですから、機械のふたを開けても内部の回路がどうなっているのか分からないものがほとんどです。数十年前の電気機器はシンプルな構造であったため、内部がどうなっているのかを分解して見たものです。分解したのはいいけれど、元に戻せなくなったという経験をした人も多いはずです。今はそのようなことをしてもまったくわからないので、機械に対する向学心がわきにくくなってきています。電気機器の設計・製造などに関わっている人でも、自分の担当している分野は詳しいけれど、電気全般に詳しいかというと、そうでもありません。それだけ技術が高度になって、全体を見渡すのが難しくなったようにも思えます。
この本では電気や電子回路に関してやさしく説明しています。まず、電気を研究して電気の単位(ボルト、アンペアなど)に名を残している科学者の紹介、電気によって起こる現象、電子回路を構成する電子部品の基礎知識、代表的な電子回路の説明を順に説明していきます。さらに、日常私たちの身のまわりにある電気機器や電気を使ったシステムを取り上げ、それらがどのようなしくみで動くのかを説明しています。
わかりやすさをモットーにして執筆をしましたが、書くスペースが限られていることもあり、すべてを細かくは説明できていません。本書に書かれている内容で電気に対して興味を持ってもらえればと思います。さらに詳しいことを知りたくなった方は、ぜひ専門書もご覧になってみてください。
電気を活用した文化はこれからもますます発展していきます。これからは電気機器を使うだけではなく、機器を使う際の便利な機能に関するアイデアが重要になると思います。本書によって読者の方々が電気に好奇心を持ち、すばらしいアイデアを出し、これからの社会に役立つことができればと思います。
2002年11月
井上 誠一 |