この本の読者の方は何らかの形でパソコンを使われていると思います。パソコンはソフトウェアによりいろいろな作業を行うことができます。ソフトウェアというのは簡単に言うとパソコンというハードウェア(機械)に行わせる動作の順番を書いたものです。これをメモリに記憶させておいて、順番に実行させると機械にいろいろな動作をさせることができます。同じハードウェアでもソフトウェアを変えれば違う動作をさせることができるので、非常に便利です。
パソコンほど高機能ではありませんが、メモリ、演算機能、入出力制御機能などを1つのICに組み込んだマイクロプロセッサというものがあります。パソコンも元々はこのような小型のプロセッサから発展したものです。今ではパソコンのハードウェアの仕掛けとか、ソフトウェアの作りを理解するためには相当な専門知識が必要になりますが、マイクロプロセッサの場合は、機能が単純な分、ソフトウェアを作るのもそれほど難しくはありません。
本書ではワンチップマイクロプロセッサであるPIC (Peripheral Interface Controller:周辺機器接続制御用IC) を使用した電子回路工作を紹介します。PICはピックと読みます。本書ではこれからPICを使った電子工作をはじめようとしている方を対象にPICの機能、ソフトウェアの作り方、工作事例などを紹介します。ですから、本書で説明しているPICの仕様は本書の工作で必要な内容に限定しています。詳細な仕様は専門のデータシートを参照して下さい。
この本の内容はインターネットで公開している私のホームページ「趣味の電子回路工作」でも見ることができます。
http://www.hobby-elec.org/
インターネットの場合、主に以下のような利点があります。
☆ インターネット端末があればどこからでも見ることができる。
☆ リンク機能により関連したページに切り替えられる。
☆ 動画を使った説明ができる。
☆ 内容の更新がすぐにできる。
☆ 誰でも手軽に情報公開ができる。
一方、書籍の場合は以下のような利点があります。
☆ 購入すれば、いつでも、好きな時間にすぐに見ることができる。
☆ ページをパラパラめくりながら見たいところを探せる。
☆ 全体を保存しておくことができる。
☆ 持ち運びができ、すぐに見られる。
☆ ホームページは閉鎖することもある。
ということで、内容はほぼインターネットのものと同じですが、本の利点を考え、本書を作ることにしました。
電子回路に関する多くの本は一般知識を先に説明して、最後に応用として事例を紹介するという構成ですが、本書では、まず、作ってみるという観点で、事例を先頭にし、それらを作るための基礎知識、方法、道具類を後にしています。何を作りたいか(目的)を先に決め、それに必要な知識を後から泥縄式に身につけるということになります。
目的が分からない一般知識は身に付かないと言うのが私の信条です。
読者の方の参考になれば非常に嬉しいです。
平成13年8月
井上 誠一 |